第39回京都教育懇話会例会は、2017年2月13日(月)18:30より、
<日本の未来と人づくり>グローバル新時代を切り開くカギは文化力~文化庁移転×京都×次世代育成~と題し、近藤誠一氏(近藤文化・外交研究所代表、元文化庁長官)をお招きし、立命館朱雀キャンパス多目的室にて開催いたしました。

門川 大作氏

門川大作京都市長のご挨拶のあと、近藤氏の講演が行われました。

 

近藤氏から最初に「大局観」と「座標軸」という2つのキーワードを提示いただきました。

大局観については、時代の流れを読む力が必要であると伝えられ、世界の情勢や歴史観などありとあらゆる切り口でお話いただきました。なかでもハムレットの中に出てくる言葉「to be or not to be」の解釈について、ご自身のエピソードを交えながらお話されたことが印象に残りました。その後、国家の形成について、その土台には民族・文化があることをお話いただき、そこから一気に文化の話へと転換されていきました。

近藤 誠一氏

その文化を考える上で重要なことは、自分の原点・アイデンティティーといった座標軸を持つことであると伝えられ、具体的に日本文化と欧米諸国の文化の対比など非常に興味深い話が続き、どんどんと惹き込まれていきました。会場の皆様は近藤氏の話にうなずきながら共感を示し、日本文化の素晴らしさを改めて感じておられました。
参加者からは、「最も基本的な視点から歴史や現状を考え、問題点を示され、現在の現象が理解できました」「これからの日本人の立位置をどう考えるべきか非常に参考になるお話」「日本人として胸に留めて社会と向き合って生きたいと思います」「理性と感情のバランス、大局観と座標軸等、示唆に富んだお話が満載で時間があっという間に過ぎました、ありがとうございました」などという感想が寄せられました。

今回の講演には教職員、社会人や学生など合わせて約110名にご参加いただきました。ありがとうございました。

 

司会者からの感想

-「ミネルヴァのふくろうは、たそがれがやってくるとはじめて飛びはじめる」。ふくろうとは知恵のシンボル、たそがれというのは文明の終わりをさす。では今、時代の転換期の認識が求められ、その変転時に一体どのように時代を捉え、行動に移していくべきなのか。第39回京都教育懇話会の例会で近藤氏は、冒頭にヘーゲルの言葉を紹介した。さらに、グローバル化に伴い、今後は教育側が求めるもの+α必要になってくるこの時代、社会の流れを読み、自ら役割を見つけ出す能力である「大局観」と「座標軸」の重要性を学ぶことができた。直に話を聴き、私自身の将来の進路について、改めて芯から考えさせられる内容であり、大変刺激を受けた。特に注目したのは、環境問題や核問題、テロなどの様々な問題について言われている原因は、現象であって原因ではなく、原因はもっと根本的な部分から探さなければならない、という話である。また、今の社会を近藤氏は、「理性や合理性に溢れた結果」だと断言した言葉には衝撃を受け、現実味があった。社会問題を解決する際の支えとして、そこに元来ある自然や・文化から知恵をもらい正しい道を示していくのは必要だと思った。外から来た人々が本当に魅了される良さは、国がつくるものがある「環境」であり自然、文化からくるものであるのだ。

会場の様子

近藤氏は40年以上もの間、外交関連の仕事を務める身として、第一線で活躍し、その半分の年月は海外で「外からの日本」を見てきた。そのため、近藤氏は浮き沈みを経た日本の良さと同時に欠点双方を多角的に捉えている。自分自身は、高校生の時から実家がある東京を離れて京都に暮らし、留学を通して自分らしさ、或いは日本人らしさとは何なのかを考え続けてきた。「今後は京都が日本の座標軸になる」という近藤氏の言葉を受けて、文化庁移転のこの時期に、京都にいる自分にとって、活性化に向けた行動を起こす絶好のチャンスだと思った。この講演で、将来は日常生活の些細なところからみられる京都にしかない精神を、将来は全国、海外へと文化の重みを堂々と発信する、と強く決心した。京都で日々学べる大切さを感じながら日々学生生活を送っていきたい。
(京都教育懇話会学生部会・立命館大学法学部1回 規矩琴香)