「司会・聞き手」役を務めた林まゆみ企画運営委員(京都市教育相談総合センター専門主事、元京都市立朱雀第一小学校長、佛教大学非常勤講師)の感想
池上先生のお話をお聞きして、なによりも日本の未来のことを真剣に考えておられ、特にこれからの社会を担う若い人たちへの力強く温かなエールを感じました。
ご講演では、世界経済の発展段階や資産形成の日米比較など初めて知ることが多く、あっという間に時間が過ぎたように思います。とりわけ世界から日本を見る視点が大切だと指摘され、グローバル世界の現実、人々の価値観の違いや多様性とは何か、まさに「目から鱗が落ちる」思いでお話を拝聴しました。
質疑の時間では、率直な疑問や考えをぶつけてみようと思い、緊張しながら「聞き手」として質問させていただきました。その最初の質問で物事には「3つの座標軸(Ⅹ、Y、Z、それぞれ歴史的経緯、世界と日本、固有の視点)があり、どの軸で話すのかまず整理して議論を進めましょう」とのアドバイスを受け、それで議論の軸は何か反芻しながらお話できたことは本当に良かったと思います。対話の中で池上先生は、「子どもたちの明るい未来や日本の未来は過去の経験則の延長線上にはない」と断言され、改めて近視眼的な見方は厳禁だと思う半面、常に挑戦するアニマル・スピリットの精神が何より大切だと実感しました。また日本の資産形成のあり方、現預金過多の問題が経済の仕組みや金融知識を学ぶ上では欠かせないこと。とりわけ金融リテラシーを身に付ける教育には、「外部の専門機関との連携、組織的、計画的な取り組みが必要」と課題提起をしていただきました。
池上先生のお話では。米国では既に40年前から学校現場で金融リテラシー教育が始まっており、そのとき以来の合言葉が「get rich slowly!」だったとお聞きし、とても強く印象に残りました。私たちもこの言葉を合言葉に金融リテラシー教育を推進していければいいなと率直に思いました。
◇中西將之企画運営委員(株式会社ツナグラボ代表取締役)の感想
とてもわかり易い話し方で、歯切れよくポイントも明確にされ、途中で「英語で構成した内容を日本語にして話している」とお話されて合点がいった。(日本語の曖昧さを排除するとこのような表現になるのだと)
複眼思考=海外から日本を見る、という見方の一つに、グリーンカードについての話が出たがこれは全く知りませんでした。これから優秀で裕福な外国人がたくさん日本に来てくれることは希望が持てるなと思った一方、日本の今ある経済格差についてはとても気になりました。単身世帯で貯蓄ゼロが40%という現状について、どう思われているのか。貯蓄から投資へ、という流れはそのとおりですが、貯蓄がすでにない世帯に対していくら投資を叫んでも意味がないと思います。既にある大きな経済格差により、富める人は自己資金を投資に回し、さらに豊かになっていく。資産の世代間再分配の機能が働いていないことや、それをわかっていても対策を打たない政治などが若者の将来悲観や無力感にもつながっていると思います。
投資ももちろんですが、マネーリテラシーとして分散投資だけでなく、これから自分で起業したときに、新規事業をどのようにマネタイズするのか、そして自己資金がなくてもクラウドファンディングなどを活用するにはどのような考え方が必要なのかといったファンドレイジングの考え方についても知っておいたほうが良いのではないかと思いました。
◇安村圭史企画運営委員(京都市教育委員会指導部学校指導課担当課長)の感想
池上先生の講演をお聞きしながら,APU出口学長のお話をお聞きした時の印象に重なるものを感じました。明快な話ぶりで,とても前向きな気持ちになれる講演でした。
世界から日本を見る,明るい日本の未来を創造する,そのための金融教育の大切さについて,世界の長い歴史の流れも踏まえつつ,文理の枠をこえた豊富な知識と経験に裏打ちされた池上先生の講演から,教員だけでなく,幅広い方々にその意義が伝わったのではないかと思います。
池上先生の講演は,高校,大学生には,とても心に刺さるんじゃないかと思うのと同時に,小中学校段階では,一体どのようなことをどのように伝えていったらいいのかなと感じたので,次の例会にもつながると思いました。