第47回 例会を終えて

京都教育懇話会企画運営委員 中西將之(株式会社ツナグラボ代表取締役)

薮中 三十二先生

第47回京都教育懇話会例会は、2019年1月21日、「激動の国際情勢を読み解く〜グローバル社会が求める新たな人材像〜」と題して、第一部基調講演講師に薮中三十二先生(元外務事務次官・現立命館大学客員教授、大阪大学特任教授)を、第二部ディスカッションは京都市立紫野高等学校の小林孝由先生の司会進行で開催されました。

まず、薮中先生の基調講演では、トランプの登場や英国のEU離脱問題など、第2次世界大戦後70年間続いてきた、アメリカ中心・国際協調=「グローバル社会」から、「反グローバル社会」に変化しつつあり、「激変」の時代を迎えようとしていること、また日本人はその変化に対して鈍感であるとご指摘いただきました。

つぎに、外交の最前線での体験に基づいて米中貿易戦争と日中関係における「大局観」の必要性など国際情勢を読み解く貴重な話題提供をいただき、そんな時代に求められる力としては、「目立ちたがり」「空気を読まず」「とにかく話す」ことだとし、どんな場でもとにかく自分の意見をどんどん発言することが大切だと語られました。

それを受けて第2部では、北方領土や竹島問題、インドの未来、トランプ大統領の個人的な評価、メディアからの情報収集方法について、など高校生が積極的に次々と質問を投げかけ、薮中先生が一つ一つ丁寧に笑いも交えながらご回答頂きました。

参加した高校生からの感想を紹介

西大和学園高等学校 1年  竹内文哉

私が藪中先生とお会いする前、元外交官現大学客員教授という略歴からきっと「お堅い人」なのだろうと思っていた。しかしそのイメージは会場に着いてからお招きいただいた打ち合わせ会で早くも崩れることとなった。話がまあ面白い。打ち合わせ後開始までの時間に質問をする機会を頂いたのだが、一つの質問と回答のセットで最低5分は過ぎる。ダラダラと過ぎる5分でなく、情報量が多すぎて脳が追いつかない類の5分だ。目の前に座っている人が持っている経験や知識といった言葉では言い表せないような何かに畏敬の念を覚えた。「外交官だから堅い人だろう」が「外交官だからこそ本当の『武器』を持った人に違いない」に変わった瞬間だった。講演から数日たった今でもその瞬間は色濃く覚えている。

講演では質疑応答で多くの方が目を輝かせて手を挙げている姿から先生が場の雰囲気を自身のものにした瞬間を肌で感じられた。流石と思わされる体験となった。

京都市立紫野高等学校 アカデミア科2年 藤澤尚弥

もともと国際関係や国際政治に興味があり、第一線で活躍された薮中先生のお話を聞くことができたのはとても有意義な経験でした。質疑応答の際に、領土問題や基地問題など、しばらく私が疑問に思っていたことに丁寧にお答えいただいたことで、自分の中で多角的な面から物事を捉えることができ、考えに深みが増したように思います。外交に直接携わった方の見ている「景色」をわずかながらでも共有することができ、今後、今までになかった目線からニュースや新聞をみることができるのではないかと感じました。

また、薮中先生のグローバル人材像を聞いて、深く共感する部分がありました。特に「自分から発信する力」はやはり、現代日本人には足りていない能力だと感じます。その際、「英語力」や「情報力」は必須であり、かつ誰でも身に付けることができる能力です。それを実践できていないのは、単なる努力不足であり、言い訳にはならないと感じました。しっかりと私自身、それらを身に付けていけるようにしたいと思います。

京都市立紫野高等学校 アカデミア科2年 辰巳慎

薮中先生のお話を聞いて、理解できるところもありましたが、やはり国際情勢についてさらに掘り下げた勉強が必要だと思う部分があると感じました。これからのグローバル社会を生きていく人間の1人として、世界の動きを詳しく知る必要があると深く実感しました。特に色々な媒体(新聞やニュースや雑誌)について、情報源を特定のものに頼るのではなく、様々なものを見ながら多角的に物事を見ていくことの重要性を学べたと思います。

グローバル人材について、「自分から手をあげて質問できることで50%は達成している」というお話を聞き、これまで私はこれから身に付けていくべき交渉力などのスキルにばかりに気をとられ、「今この瞬間からできること」に目を向けていなかったのだと「ハッ」と気づかされました。

シンポジウムの後、家に帰り、これまであまり積極的にみることのなかったニュースや新聞をみるという変化が生じました。「受け身」になるのではなく、「能動的」になることを大切にしていきたいと思います。

金光大阪高等学校 1年 向山翼

今日の国際事情はめまぐるしく変わっているわけですが、私は具体的にこの状況に対してどのような対応を取ればよいかを知るために藪中先生の講演会に参加しました。まずこの講演会は私の将来を左右する大きな経験になりました。それは、薮中先生の考える日本人としての立場や役割、誇りを知り自分の将来の未来像が明確に確認できたからです。そして、グローバル人材に必要な力である人間力や「個」の力といった勉強だけでは補えない部分をこの高校生の時期から補っていこうと思いました。

二つ目に、「日本には世界を平和へと導く力がある。」これは先生が仰っていた言葉ですが、私はこの言葉に非常に感銘を受けました。何故なら、この言葉は平和であることは大事だと考えながらも平和をつくる行動に乗り出せていなかった自分に一歩目を踏み出す勇気をくれたからです。講演の後もこの言葉は長い間ずっと頭の中で鳴り響いていた程、私にとっては卓説でした。

何かの一歩目に踏み出すことを戸惑っている人やグローバル人材になりたい人に私は先生の講演会に参加することを是非提案したいと思います。

質疑応答の様子

会場の様子